はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」
(続き)
(前回出たワードをそのまま使っているので前回の記事を読むと少し分かりやすいです)
2015年7月。高校を中退しました。
中学時代からパニック障害で不登校になり、全て勉強を忘れて2月に家庭教師をつけてもらい中3の勉強を全部詰め込んで入った高校。
中退理由は単純に病んだからです。一応友達を作ろうと軽く話しかけた子は2人いました。2人とも違うクラスに中学時代の友達がいました。
なんやかんや僕は昼休み一人で弁当を食べて寝たふりをします。本当に友達がいなかったのは僕だけでした。
ただでさえ病んでいるのにこれはキツイ。そこからだんだんフェードアウトしていきます。
教室に行きたくない子が行く部屋でも「はよ行きなさいよ」と除け者扱いでした。とても辛かったです。
最終的に学校の人から「このままだと留年か中退ですね」と言われました。
中退を選択しました。
せっかく金も出してもらって私立に行ったのにとんでもない親不孝者です。
夏。両親はそんな僕を元気つけるため「アウトレットに行こう」と提案してくれました。
2015年7月にオープンした小矢部アウトレットパークです。
あまり乗り気ではなかったものの、両親を心配させたくないのと不登校時代のようにショッピングモールに行ってもあまりパニックにならなかったので首を縦に振りました。
それが間違いでした。
若者の多さと人の混雑さにパニックになりうずくまる僕。両親はなんとか外に出してくれて車に載せたのですが僕は今の情けなさすぎる、病んでいる自分を受け入れられずポロポロ涙をこぼしました。
パニック障害は治っていませんでした。
他にも新しくなった富山駅に行ったり、砺波のイオンに行ったりしました。富山駅は動悸が止まりませんでしたが砺波のイオンはガラガラなのでなんか大丈夫でした。
好きだったカターレ富山や富山サンダーバーズの試合も見に行かなくなりました。
ただしタフィー・ローズが来たときはサイン目当てで見に行きましたが、「5000円以上購入した方限定でサインをする」という高1にはキツいハードルだったのでサインを貰えずじまいでタフィーは帰国してしまいました。
でもタフィーのホームランを見れただけで幸せです。
どこか行けたとしても高校を半年もせず行かなくなり中退した中卒無職に変わりがありません。
将来が全く見えなかった僕。僕自身は何をしていいのか分かりません。
もちろん就職なんてむり。ゲームもせず、オーナーズリーグも放置し、インターネットも触らず。せっかく買ってもらった新しいiPhoneもゲームを消し、曲を入れないどころか全く触らず。メルカリも入れたまままったくいじらず。iPadも放置。
昔よく行ってた、そして今の時間潰しのメインとなっているハードオフやセカンドストリートにも行っていません。
基本なにをして時間を潰していたのか自分自身でも思い出せません。
この頃の外出は基本病院だけだったと思います。あと病院帰りにアピタのゲーセンでUFOキャッチャーをしていました。何故かこの時期少しハマっていました。今はほぼしていません。
両親は次の高校への話も考えてくれていました。富山駅に近い高校や魚津の高校、通わなくても良い高校など色々見に行ったり話を聞いたりしました。
最終的に高校は決まりました。通信制高校です。
オリエンテーションに行きます。オリエンテーションは母親に付き添ってもらいましたが、中々の人の多さにパニックになりトイレに行きました。
トイレでは朦朧とした意識で窓の外を眺めていました。飛び降りようかと考えました。自殺を考えたのは多分この時だけな気がします。
まあなんやかんやこういう子でも3年半で高校を卒業出来ちゃうんですよね。書いている自分でも驚きです。
その頃、親戚のじいちゃんが亡くなりました。声が出せなくなっても、管を刺されまくっても、病室で僕の言葉に頷きで返事をしてくれた親戚のじいちゃん。僕は悲しかったですが、それ以上に親戚が集まる事に恐怖を覚えていました。
その恐怖は現実となりました。
「○○はもう高校生だもんな?」
「○○はどこの高校行ってるんだ?」
とっくに高校なんて辞めました。確かに通信制高校には入学しました、がまだ通っていません。前にいた学校もほとんど通っていないので高校のことを話せばボロ以外何も出ません。
もちろん一部の親戚の人以外は僕が中退した上で通信制に行ったことを知らないので当然です。僕は逃げました。とにかく逃げました。逃げた先のテレビではNHKでナゴヤドームでの中日戦がやっていました。ネイラーが投げていましたが、6回裏、援護はありませんでした。
通信制学校のスクーリングが始まります。最初は何を考えているのか分からない先生達と髪を染めた、ピアスをしているヤンキーのような生徒ばかりで恐怖を覚えました。8割位ヤンキーだった気がします。
次の登校日にはヤンキーのような生徒がほとんど消えていました。その登校日から卒業まで最初にいたヤンキー集団を一度も見かけませんでした。
最初に来ていた8割のヤンキーはなんだったのか未だに謎です。
そして同じく秋入学の話せる生徒が一人できました。友達と言えるかは微妙、そこまで会話もしていませんし、いつの間にか距離が離れていましたが、初年度は二人で行動する事もありその人のおかげで学校をやめなかった部分があります。ありがとう。
まあそれは置いといて高校を辞めてから中身がまったくない僕。
そんな僕を変えたのはザ・クロマニヨンズというバンドでした。
学校が始まる前の9月。深夜にテレビをつけてボーッとしていました。音楽番組が始まりました。
この時期の少し前の27時間テレビで中居正広さんが「チェインギャング」を歌っていて、それが気になり調べて少しブルーハーツのマイナーな曲にハマった時期でもあります。
他にもアーティストは出演していましたし、トークもしていたのですがボーッとしていたので人が出ていたのか全く覚えていません。
すると変なおじさん達がいました。変な事を十数秒話しています。本当に変な事です。
そして曲が始まり歌い出します。その曲がこれでした。
土曜ドラマ「ど根性ガエル」のED曲。土曜ドラマはよく見ますが、ど根性ガエルは見ていなかったような気がします。
今までもthe pillowsやPOLYSICSやアーバンギャルド、mosaic.wavやボカロ系も好きでした。音楽はスペースシャワーとHEY!HEY!HEY!とネット掲示板とyoutubeとニコニコ動画で全て情報を入れていました。中学に入ってから全く聴かなくなりましたが。
不登校になってようやく銀杏BOYZとガガガSPを聴きまくりました。以前から存在は知っていましたがどハマりしました。
クロマニヨンズの甲本ヒロトさんと真島昌利さんがやっていたブルーハーツやハイロウズも知っています。春頃にブルーハーツの曲が流れるアニメをやっていましたがぶっちゃけ中身あんま覚えていません。カバーアルバムは買いましたが。
よく考えれば、動画サイトで聴いたことのある「ワハハ」や「ナンバーワン野郎!」、「突撃ロック」もこの人達の曲でした。
ブルーハーツに少しハマった時にもクロマニヨンズをレンタルで聴きましたがそこまでハマりませんでした。
ただし、上記のバンドや曲を聴いても「いい曲だなあ」とは思いますが「ギターを持とう」なんて思いません。
曲自体はシンプルなロックンロールでした。今聞くとギターのコードもバッキングもベースもドラムも全てシンプルです。
逆にシンプルなロックンロールだったのが僕に刺さった理由でしょうか。
このエルビス(仮)を全力で歌い上げる、演奏するおじさんたちを見て僕の胸に爆弾抱えたジェット機…じゃなくてなにかが刺さりました。
今まで触れたものは「なにか」が刺さりませんでした。
その「なにか」は今も分かっていません。
早速ツタヤに行きます。アルバムを買いました。JUNGLE 9というアルバムです。
全曲通して聴きました。最後の「今夜ロックンロールに殺されたい」で僕の中で刺さった「なにか」が怪物になりました。
僕はギターを買う決心をしました。
翌日。婦中の大戸屋で「ばくだん丼」を待つ僕。
遅いのでメルカリを開き「ギター」と検索します。色々出てきました。
売上金は3500円ありました。3500円でギターが(確かセルダーだったような)売っていました。オリックスのブランコのユニフォームも3000円で見つけました。
当時のギターに対して右も左ももわからない僕は買いませんでした。オリックスのブランコのユニフォームも買いませんでした。
11月。アピタで母親と会話をします。
「ギター買いたいんやけど…」
「ふーん…エレキはうるさいしアコースティックギターにしたら?」
結局エレキギターを買うことにしました。今までの人生ではいつも教師や友人や店員、そして両親からの助言を参考に生きてきました。ただ助言を上手く活かす事は基本出来ませんでしたが。
人の意見を全く参考にしなかったのは多分これが初めてなんじゃないかな、と思います。
ここから人に意見を聞くだけ聞いて全く参考にしない人生が始まります。
年を越して2016年、つまり2015年度の3月。
僕はギターを注文しました。セルダーのストラトでした。
躊躇していた訳ではなくただ単に学校が忙しく、そして通信制のシステムに慣れていなかっただけです。
半年通うと慣れて単位も取れていましたし。
アマゾンで購入。今は潰れて別の店になっているファミリーマートに行って支払いました。
「マーシーに憧れたんだろ?ならレスポールだろ」とは思う人もいるでしょう。
レスポールは2万、ストラトは色々ついて1万ちょいでした。僕は基本値段を見て決めます。何も分からないときはとりあえず安い方を選ぶタイプです。シングルとハムの違いなんて分かりませんでしたし。ストラトの方がギターのイメージっぽかったんで。
届いてさっそく2階に持っていきます。アンプに電池を入れギターを触ります。
「ガッ」という汚い音がしました。僕の初めてのギターの音です。
見様見真似に腕を動かします。本来なら手首をしならせるべきですがギター1日目の僕に何が分かるというのでしょう。
先に買っておいたヤマハの教則本にはブルーハーツの「リンダリンダ」が載っていました。いつかバンドを組んで演奏しよう、そう考えていました。
母親が帰ってきて「ダンボール邪魔やけど捨てていいか」という言葉を無視して、僕はギターをかき鳴らしていました。
2015年度の話。おわり。