はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」
はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」
平成が終わり、令和が始まろうとしていた日。
自分は何も考えられなかった。
通信制大学に入り1ヶ月。大学辞めようと決心した。
春先。講義の配信が始まった頃、38.6℃を叩き出しながらも勉強をしていた。自分を追い詰めないとついていけない気がした。
近所の小さな病院で風邪と診断されケツに注射をうたれるも効果なし。
大きな病院に連れて行ってもらい、「EBウイルス」と診断された。
症状が出てから一週間の話だ。原因はよくわからないが姉も少し前にEBウイルスにかかり入院していた。
軽く点滴を受けながら、それでもイヤホンをして講義を真剣に聞いていた。
その頃、祖母のボケが悪化してストレスが溜まりに溜まりまくっていた。
そして頭がパッカーンとなった。数年ぶりの感覚だった。
また昔のように引きこもりに戻る。好きな事に対する熱がなくなる。人のいる所に行けない。今まで楽しんでいた事を楽しめない。そう考えただけで嫌になった。昔に戻るのが嫌だった。
しかし外に出るのも怖い。どうしたらいいのか。
ストレスの原因をとりあえず「大学で詰め込みすぎた」という事にした。
勉強を投げ出した。まただ。中学の時も高校の時も投げ出した。
大学でもまた投げ出して繰り返すのか、と何度も自問自答した。
未来は見えなかったが、それ以上に辛かった。
4月19日。
勇気を振り絞り父親に話した。
「大学辞めたいんやけど」
父親は「辞めてもなんとかなる」と背中を押してくれた。
中学と高校、二度リタイアしたのに。
大学を辞めると話してからなんだか気が楽になった。
そこで未来について考えた。何も思いつかなかった。
「どうせ辞めるんだから、気になる講義を適当に好きな時間に受けるか」という気持ちで講義を受けることにした。
気持ちを楽にして講義を受けた結果、案外なんとかなった。
結局辞めなかったが、父親のその言葉を胸に生きている。生きていればなんとかなると。
4月30日。未来が見えなかった。令和の自分はどうなっているのか。
小説を書き終え、日記に未来へのメッセージを書き、寝た。
時計の針は午前3時を指していた。
完。